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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
「じゃ、おすまでも来ましたか」
「いや、お宮さん。あなたがそこへおかえりになるちょっと前、まだ終点まで行っていられるか、いられないくらいです。お会いになるはずだがなあ。お会いにならなかったですか」
「いえ、会いません。……それで何とかいってゆきましたか」
今まで何度来ても、それはこちらで玉をつけてやるから来るので、向うからついぞ訪ねて来たことなどなかったのに、めずらしい。どうしたのだろう。と、滅入っていた心がにわかに引き立って、これはいくらか、惚れられているのだな、と。そう思うとそこらがたちまち明るくなって、ぞくぞく嬉しくなった。
「そしてこれを家へあげますといって置いていらっしゃいました」
老婦はお宮の絹手巾で包んだ林檎を包みのまま差し出した。手に取り上げて見るとお宮と一緒にいるような薫りの高い香水の匂いが立ち迷うている。
「ああ、そうですか。何か用があるんだな」
「ええ、何か御用がありそうでしたよ。お留守ですと申しましたら、ちょっとそこに立って考えていらっしゃいましたが、これをあげますといって、包みのまま置いておかえんなさいました」
「ああ、そうですか。