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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

それで、私は、先だって鳥安につれてった客が柳沢であったということが分ると、もうお宮を取ってゆかれそうな気がして、また堪えられなくなって来た。

「そりゃいつごろのこと?」

「うむ、ついこの間さ」

ついこの間といえば、いつのことだろう。先だってからお宮は、深い因縁の纏綿った男が、またひょっこり、自分がまたこの土地に出ていることを嗅ぎつけて来たといって、今にもどこかへ姿を隠すようにいっていたのが、一週間ばかりして、また当分どこへもゆかないといって、それで、先に来た時に一緒に義太夫を聴きにいったりしたのだ。あの時もう鳥安に行ったことを言っていたから、じゃ私が一週間ばかり来なかった、その間に柳沢は来て、私がまだ女をつれて外になど少しも出ない時分に鳥安なんかへ行ったのだ。女にかけては、世間では私などを道楽者のようにいっているが、よっぽど柳沢の方が自分より上手だ。と思うと、私はなおのことお宮のことが心もとなくなって来た。そしてつまらぬことをお宮に根掘り葉掘り訊きたいのを、じっと抑えて耐えながらもやっぱり耐えられなくなって、さあらぬようにして訊ねた。

「あの人、好い男だろう」