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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
「もう帰ろう」私はお宮を促した。
「ええ」といったきりお宮は尻を上げようとはしなかった。
「あなたまだ社へ行かないの」
「まだゆかない」お宮は柳沢に対っては優しい口をきいている。
「おいもう帰ろう」しばらくしてまた私はお宮を促した。
「あなた帰るならお帰んなさい。私もっといるから」
私は、自分がもし一人で先帰ったら後で二人どんな話しをするか、それが気づかわれた。私は、お宮が柳沢とすでに二、三日前に三日も蠣殻町の待合に居続けして逢っていることをちっとも知らなかったのだ。
それでお宮にそういわれても私は一人で起とうとせず、やっぱりお宮を促して待っていた。
「ああ帰ろう」と、いってお宮はとうとう立ち上りそうにした。
私はもう起ち上った。
「すぐ行くよ。あなた階下に降りて待ってて下さい」
そういってお宮は何か柳沢に用ありそうにぐずぐずしている。
それを見ては、私もそこにいるのが気が咎めたからさっさっと降りてしまった。
やがて五分間ばかりしてお宮は降りて来た。そして私のいる加藤の家を出る時はろくろく挨拶もしなかったお宮が柳沢のところの老婢に対ってぺったり座って何様のお嬢さんかというように行儀よく挨拶をしていた。