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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
けれども私は、どうしてもそのまますぐ東京へ帰ってゆく気にはなれなかった。そして九月の下旬に山を下りて紀伊から大阪の方の旅に二、三日を費やして、侘しい秋雨模様の、ある日の夕ぐれに、懐かしい京都の街に入ってきた。夏の初め、山の方に立ってゆく時は女の家から立っていったので、長い間情趣のない独り住居に飽きていた私は、しばらくの間でも女の家にいた間のしっとりした生活の味が忘られず、出来ることならばすぐまた女のところへ行きたかったのだが、女は九月の初めに、それまでいたよその家の二階がりの所帯を畳んで母親はどこか上京辺の遠い親類にあずけ、自分の身が自由になるまで、少しでもよけいな銭のいるのを省きたいと言っていた。そのくらいのことならば、私の方でも心配するから、夏のおわりに、自分がまた山を下りてくるまでお母さんは、やっぱりここの家へ置いて、所帯もこのままにしているように言い置きもし、手紙でもたびたびそのことを繰り返しいってよこしたにもかかわらず、とうとう家は一時仕舞ってしまったと言って来ていたので、私は懐かしさに躍る胸を抱きながら、その晩方京都に着くと、荷物はステーションに一時あずけにしておき、まず心当りの落着きのよさそうな旅館を志して上京の方をたずねて歩いたが、どうも思わしいところがなく、そうしているうちに秋の日は