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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
早くも暮れて、大分蒸すと思っていると、曇った灰色の空からは大粒の雨がぽつりぽつりと落ちてきた。
どこか親し味のある取扱いをして泊めてくれるようなところはないだろうか。女はなぜ、あの二階借りの住居を畳んでしまっただろう。自分は、五月から六月にかけて一カ月ばかり彼女のところにいる間に健康を増して、いくらか体に肉が付いたくらいであった。しかし、もうあそこにいないと言えば、これから行ってみたところでしかたもない。母親はどこにいるのだろう。もっとも女に逢おうとおもえば、すぐにでも会えないことはないが、そうして逢うのは、つまらない。
そんなことを考えながら、ともかくも、これからしばらくゆっくり滞泊するところが求めたいと思ったけれど、そのほかに心あたりもなく、しかたなくまた奥まったところから、電車の通っている方へ出てくると、その電車はちょうど先に女のいたところの方にゆく電車であったので、今はそこにいてもいなくても、やっぱりそっちの方へ引き着けられてゆくような気がして、雨も降ってくるので、そのまま電車に飛び乗った。そして東山の方をずっと廻って祇園町の通りを少しゆくと、そこに彼女のいた家があるので、その近くの停留場で電車を降り、夏の前しばらくいて勝手を知っている、暗い路次の中に入っていって見たが、門は締っていて、階下の家主