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はんぎゃく

日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)

矢田 津世子

線上閱讀矢田 津世子《日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)(はんぎゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,512 字 · 34 頁

青空文庫

5

「何処へ逃げ込んだんだろう。お松さんかね?……今ね、鼠が……」

スイッチを探すお松の手に、男の裸な胸が触れた。彼女は二三歩跳び退いた。

「電燈つけちゃ駄目だ。鼠が逃げてしまうからね。折角此処迄追いこんだんだ。確かこの中だな。素手で捕えてみせるよ。いいか。兼ちやん余り騒ぐもんだから逃げちゃったかしら……」

闇の中で男の身繕が際立ってザワついた。声が縺れて慄えている。

「アーメン、来うよ。来うって……」

白い腕が無気味に動いて男を探し求めた。

「兼! さ、行こう、来うよ。」

お松は娘の躯を抱えるように曳きずって行った。

「そうだ。寝た方がいいんだ。僕が余りバタバタやったもんで起き出してきたんだ。それはそうと、お松さん、今夜の伝導説教はどうだったね。集りはよかったですかね?」

妙に嗄れた高い声が、会堂の中からお松を追い駈けてきた。

「……はい、万事都合よく、みな様は先生の御病気を案じ申していられました……」

鼻の先きへ熱いものが突き上ってきた。

お松は静脈の突起した手を胸へ置いた儘、明方迄祈りを続けていた。

5

眼の鋭い、禿鷲のような男が訪ねてきて、欽二の行動について、お松の知ってる限りを鑿のような舌の先きでほじくっていった。