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はんぎゃく

日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)

矢田 津世子

線上閱讀矢田 津世子《日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)(はんぎゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,512 字 · 34 頁

青空文庫

彼の神に近い行為に報ゆるため、信者達は特別献金を申し合せた。教父は丁寧に断った。が、結局信者達の熱意に動かされて金を納めた。彼はその日のうちに金を貯蓄銀行へ持っていった。三流新聞は、日曜附録に、再び沢木教父を写真入りで紹介した。彼の善行は三段抜きで紙面の上部に光った。本部からの称讃の言葉と共に金一封が到達した。信者が増した。教父は満足げに頷いた。僧衣の中で、指が算盤をはじいていた。お松達は、一層親切に待遇された。信者達は「小母さん」の存在を聖母の位に迄引き上げた。これは、彼女の夫が貧しい大工であった、という一事が原因していた。併し、心の中でお松は夫を嗤った。(彼女の知っている範囲では、夫は始終飲んだくれていて、丁半が病みつきで、敗けるときまって彼女を足蹴にするのが癖だった)信者達の親愛は日毎に加わった。そして、お松自身はますます神の御座近く進んだ。世話好きな信者の斡旋で息子はやがてメリヤス工場の見習にやられた。暇を貰って帰ってくる度に、お松は殺した長男を憶って泣いた。あの入水の時、棒杭で強か脳を打ちつけた娘は、ぼんやり口を開いて、弛んだ視野の中で生きていた、お松は、天なる父の恵みにかけても、此娘の上に奇蹟の現われる事を今か今かと待ちあぐんでいた。