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あゆむ
日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)
戸田 豊子
線上閱讀戸田 豊子《日本プロレタリア文学集・23 婦人作家集(三)(あゆむ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,183 字 · 44 頁
七
」――
遅くて、此処一週間、早ければ今明日の中に解決がつくということが争議団全体の確信となっていた。
此の重要な時期に於けるこちらの対策を至急立てなくては不可ない――松枝達はせせこましい裏通りを歩き乍ら、種々協議した。
黒い布で電燈を蓋い物音をしのび乍ら、松枝はその夜、夜明しで仕事をした。
七
土堤の両側に、松金、松木、その他の工場が黒々と静まり返っている。松枝はビラの包みを抱えて、橋の袂をぶらりぶらりしていた。ちょうちんを灯けた牛車が橋を此方へ渡り切った頃、そのかげから、鉄ちゃんがひょっこり現われて来た。
「ビラだけ? デンタンも出来たのかい。」
「あ、デンタンも出来た。」
「明日中にK署の楼上で、交渉開始ということに決定したんだ! 此方の準備が早くてよかった――」
鉄ちゃんは橋の上を身軽く飛んで行った。
争議団の頽勢に油断して、警備の者が一人もいないことを見定めていた――松金の塀はあの事件以来今だに人、一人通る程の穴が開いていた。鉄ちゃんは其処から潜りこんだ。未完成の鋳物が、無気味に手を突き伸ばしている中庭を目がけて進んだ。
橋の向側で暫く様子を見た後、松枝は反対の道を引っ返した。