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そしきされたちから
日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
今野 大力
線上閱讀今野 大力《日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)(そしきされたちから)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,639 字 · 17 頁
花に送られる
小金井の桜の堤はどこまでもどこまでもつづく
もうあと三四日という蕾の巨きな桜のまわりは
きれいに掃除され、葭簀張りののれんにぎやかな臨時の店店は
花見客を待ちこがれているよう
私の寝台自動車はその堤に添うて走る
春めく四月、花の四月
私は生死をかけて、むしろ死を覚悟して療養所へゆく
すでに重症の患者となった私は
これから先の判断を持たない
恐らく絶望であろうとは医師数人の言ったところ
農民の家がつづく
古い建物が多く
赤や桃色の椿が咲く、家も庭も埋めるごとく
今満開の美しい花々
桜の満開のところがある、八重の桜も咲いている
自動車は花あるところを選ぶ如く走る
花に送られて療養所に入る私を
療養所のどの寝台が待っているか
二度と来ぬわが春とは思われる。春はおろか
この秋までも、誰かこの生命を保証する
私は死を覚悟の眼で美しき花々の下を通ってゆく
(一九三五年五月十四日作『詩精神』同年六月号「今野大力特輯」に発表『今野大力・今村恒夫詩集』改訂版を底本)