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しゅんせつせん
日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集
葉山 嘉樹
線上閱讀葉山 嘉樹《日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集(しゅんせつせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,935 字 · 73 頁
乳色の靄
四十年来の暑さだ、と、中央気象台では発表した。四十年に一度の暑さの中を政界の巨星連が右往左往した。
スペインや、イタリーでは、ナポレオンの方を向いて、政界が退進した。
赤石山の、てっぺんへ、寝台へ寝たまま持ち上げられた、胃袋の形をしたフェットがあった。
時代は賑かであった。新聞は眩しいほど、それ等の事を並べたてた。
それは、富士山の頂上を、ケシ飛んで行く雲の行き来であった。
麓の方、巷や、農村では、四十年来の暑さの中に、人々は死んだり、殺したり、殺されたりした。
空気はムンムンして、人々は天ぷらの油煙を吸い込んでいた。
一方には、一方の事は、全で無関係であった。勝手に雲が飛び、勝手に油虫どもが這い廻っているようであった。
人々は、眼を上げて、世界の出来事を見ると、地獄と極楽との絵を重ねて見るような、混沌さを覚えた。が、眼を、自分の生活に向けると、何しろ暑くて、生活が苦しくて、やり切れなかった。
その、四十年目の暑さに、地球がうだって、鮒共が総て目を白くして浮び上ったと思うことは、それは間違いであった。どこにでも避暑地と云うものがあった。日本には軽井沢があり、印度にはダージーリンがあり、アメリカには、ロッキーがあった。