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しゅんせつせん

日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集

葉山 嘉樹

線上閱讀葉山 嘉樹《日本プロレタリア文学集・8 葉山嘉樹集(しゅんせつせん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 34,935 字 · 73 頁

青空文庫

鍋の中で、ビチビチ撥ね疲れた鰌だった。

白くなった眼に何が見えるか!

――どこだ、ここは?――

何だって、コレラ病患者は、こんなことが知りたかったんだろう。

私は、同じ乗組の、同じ水夫としての、友達甲斐から、彼に、いや彼等に今、そのどこだったかを知らせなければならない。

それは、………………

だが、それがどこだったかは、もっと先になれば分るこった。

彼は、間もなく、床格子の上で、生きながら腐ってしまった。

裂かれた鰻のように、彼の心臓は未だピクピクしていた。そうしたがっていた。彼の肺臓もそうだった。けれども、地上に資本主義の毒が廻らぬ隈もないように、彼の心臓も、コレラ菌のために、弱らされていた。

数十万の人間が、怨みも、咎もないのに、戦場で殺し合っていたように、――

眼に立たないように、工場や、農村や、船や、等々で、なし崩しに消されて行く、一つの生贄で、彼もあった。――

一人前の水夫になりかけていた、水夫見習は、もう夕飯の支度に取りかからねばならない時刻になった。

で、彼は水夫等と一緒にしていた「誇るべき仕事」から、見習の仕事に帰るために、夕飯の準備をしに、水夫室へ入った。