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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,765 字 · 21 頁
四
その家のあるじは長沢市左衛門といって、登野村とは遠い縁家になっていた。田地山林も多く持っているし、広い屋敷のなかには二た棟の機屋があり、人を使ってかなり盛んに米沢織を出していた。
菊枝はあるじに会った、包まずにすっかり事情をはなし、老母のみとりをさせて貰いたいとたのんだ、
「でも不縁になったわたくしということがわかりましたら、姑上さまはきっと御承知なさらないと存じます、菊枝だということは内密にして、どうぞよろしくおたのみ申します」
「あなたはこの老人をお泣かせなさる」
市左衛門は本当に眼がしらを拭いた。
「よろしゅうございます。お願い申すのはこちらでございます、どうか面倒をみてあげて下さいまし、必ずあなただということの知れぬように致しますから」
「ああ、これで生きる道ができました」有難う存じますと云って、菊枝もそっと眼を押しぬぐった。
四
登野村の老母は別棟になっている隠居所にいた。前には母屋へつづく庭がひらけ、うしろはずっと松林だった、厨にはその松林を通して引いた筧から、絶えず清冽な水がせんせんと溢れていた。……市左衛門にともなわれて隠居所へいったとき、姑は座敷の端に坐ってひとり団扇を動かしていた、菊枝はその孤独な、寂しい姿をみるなり、ぐっと熱いものがこみあげてくるのを、抑えかねた。