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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,841 字 · 25 頁
刻の移るのを忘れて、由紀はずいぶんながいことそこに佇んでいた。……そして道普請が済んでからも、惹かれるような気持でそちらへまわり、家にいてもふとすると藪蔭の湿った黒い土が眼にうかぶのだ。
十二月にはいると雪の舞う日が多くなった。朝のうち照っていたのが、午さがりに曇ったと思うと、いつかちらちらと粉雪になる。然し積もるという程もなく歇んで、夜空は星をちりばめたように晴れるが、朝明けにはまた降りだしている、そういう日がつづいて、道の端や家のうしろや日蔭のそこ此処に、冰ったまま溶けない雪がしだいに面積を弘げていった。なほ女のようすが変りだしたのはその頃からのことだった、由紀の立ち居を見る眼がどこやら尖ってきたし、ものを云うにもなんとなく棘が感じられた。稽古からの帰りが少しでも遅れると、まだそんな時刻でもないのに厨におりて夕餉のしたくをしていたり、またわざとのように夜半すぎまで縫物をしていたりした。それが自分へあてつけているのだと気づくには、そのときの由紀はあまりにひたむきであり若かった、そしてあんなにしっとりとおちついた人だったのが、絶えず苛いらとふきげんな態度になってゆくのを、ただはらはらした気持で見まもるばかりだった。