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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《日本婦道記(にほんふどうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,885 字 · 27 頁

青空文庫

こんど強いられたらなんと答えよう、そう案じていたが、吉村の母はそれきり笠のことには触れなかった。……そして九月も中旬に近い或る日の、もう昏れがたのことであった。定日でお繩小屋へ出ていたあきつが、仕事を終って帰って来ると、家の中からふっと香の煙が匂ってくる、ご先祖の日ででもあるのかしら、そう思いながら、

「唯今もどりました」と云って厨口へまわった。するとそこにより女が待っていて、「ご苦労さま、お疲れでしょう……」と少し顫えるこえで云った、それは寒けを感じている人のような声だった。

「お話がありますから、そのまますぐ来て下さい、用事はあとになすって……」

「はい」あきつは恟とした、「はい、唯今すぐにまいります」

あのことが知れたのだ、あきつはそう直覚した。ごようすが常ではない、きっとそうだ、それに違いないと思うと頭がかっとして、暫らくは物がはっきりと見えなくなった。

「もっとこちらへお寄りなさい」

はいってゆくとより女はそう云って自分の膝の前をさし示した、

「……あきつさん、大三郎が帰って来ましたよ」

いきなりだったのて、あきつはこくりと喉を鳴らした、より女はしずかに眼をあげて仏壇を見やった、そこには燈明がまたたき、香の煙が揺れている、より女の眼を追ってその仏壇を見あげたとき、あきつはわれ知らずああと叫んだ。