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にほんばし

日本橋

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《日本橋(にほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 頁

青空文庫

それを怨んで、未練も有って、穴から出たり入ったり、ここいらつけ廻しているに違いない。何の男のようでもない。のッそりの蝦夷なんか、私は何とも思わない。悪く形でも顕して見たが可い。象牙の撥があるものを、払き殺しても事は済む。――国手の身のまわりをつけ廻されるんだと、ね、千世ちゃんや、姉さんは本当に案じられる。

角の紀田屋まで送って行って、車をそう云って帰して来たがね、獣は駆けるのが疾いやね、車にも乗れば乗るだろう。――泊めたかったが、お肯きでなし、……」

とお孝は独言のように云って、

「途中で、またそうでもない、新聞にお名前の出るような事なんぞ無ければ可いが、」

と気を揉む頬の後毛は、寝みだれてなお美しい、柳の糸より優しいのである。

「姉さん。」

お千世が顔を覗いて、

「縁起棚へお燈明をあげて、そしてお祈をしましょうよ。私も拝みますわ。」

「嬉しい娘だね。」

と頬摺したが、襟を合せて凜として、

「お待ち、私、考えた。……お稲荷様へお百度を上げよう。」

とて見返る祠は、瓦斯燈の靄を曳いて、空地に蓮の花の紅いがごとく、池があるかと浮いて見える。

「数取りにはね。」

と云うより早く、ぴりぴりと比羅紙を引剥がす……