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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,172 字 · 36 頁

青空文庫

かような家業でなければ子供を教育しながらでも出来るのにと、それは、ひしひしと彼女に後悔に似たものを思わせて、あたしを、今度は以前とはあべこべに大事にしてくれ、もはや、家を出てくれるなと言い出した。

あたしの自立は、また此処で一頓挫しなければならないことになった。しかし、書いたものは、歌舞伎座や新富座などで、一流中の一流俳優によって上演されるのがつづくようになった。女流劇作家も他にいなかったし、女流の作が劇場外からとられるのも最初だったが、どうしたことか、絵ハガキなぞも上方屋から売り出されたりしたので、母はいよいよ悦ばされ、袴をはいてくれれば、頸からかける金鎖と時計を買ってあげるなどと、とぼけたことを言ったりするほどであった。そして彼女も、一層活動しようとした。

そのころ、芝公園内の、紅葉館という、今でこそ、大がかりな料亭も珍しくないが、明治十四年ごろの創立で、華族や紳商が株主になって、いわゆる鹿鳴館時代の、一方の裏面史を彩どる役目をもっていたうちが、創立者の野辺知翁が死んでから萎微していたのを、当時の社長におされた中沢銀行の中沢彦吉氏が、母を見込んで引き受けてくれないかと、再々足を運ばれた。