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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《旧聞日本橋(きゅうぶんにほんばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,120 字 · 15 頁

青空文庫

沖では船頭が寒がっている。二人の比丘尼隠居のところからはせっせと使いがくる。

夏の日は大川の船の中で昼寝をするのがならわしだった。髪を洗ってから、ちりめん浴衣で、桟橋につけさせてある屋根船へ乗る。横になりながら髪を煽がせるのだ。そうした大名にも出来ない気ままが、家のうちに充満して、彼女の笥には何百両の鼈甲が寝せられ、香料の麝香には金幾両が投じられるかわからなかった。現今の金に算して幾両の金数は安く見えはするが、百文あれば蕎麦が食えて洗湯にはいれて吉原へゆけたという。競べものでないほど今日より金の高かった時代である。

とうとう三菱が起り、三井が根をなし、旧時代の廻米問屋石川屋に瓦解の時が来た。

残りの有金で昔のゆめを追っているうちに、時世はぐんぐんかわり、廻り燈籠のように世の中は走った。人間自然淘汰で佐兵衛さんも物故した。そのあとの挨拶に来たのが、私に印象させた長茄子のおばさんだったのだ。

ある時、急に社会が外面的に欧化心酔した。それは明治十八年頃のいわゆる鹿鳴館時代で、晩年にはあんなゴチゴチの国粋論者、山県元帥でさえ徹宵ダンスをしたり、鎗踊りをしたという、酒池肉林、狂舞の時期があった。