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わせだかぐらざか
早稲田神楽坂
加能 作次郎
線上閱讀加能 作次郎《早稲田神楽坂(わせだかぐらざか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,407 字 · 46 頁
そして公衆食堂には、これを利用するもの毎日平均、朝昼夕の三度を延べて四千人の多数に上るという繁昌振りを示し、飯塚酒場などには昼となく晩となく、いつもその長い卓上に真白な徳利の林の立ち並んでいるのを見かけるが、私はいつもこの横町をば、自分勝手に大衆横町或はプロレタリア食傷新道などと名づけて、常に或親しみを感じている。
私は神楽坂への散歩の行きか帰りかには、大抵この横町を通るのを常としているが、その度毎に必ず思い出さずにいられないのは、かの芸術座の昔のことである。このせまい横町に、大正四年の秋はじめてあの緑色の木造の建物が建ち上った時や、トルストイの『闇の力』や有島武郎の『死とその前後』などの演ぜられた時の感激的な印銘は今もなおあざやかに胸に残っているが、それよりもかの島村抱月先生の寂しい傷しい死や、須磨子の悲劇的な最期やを思い、更に島村先生晩年の生活や事業やをしのんでは、常に追憶の涙を新たにせざるを得ないのだ。
私の追想は更に飛んで郵便局裏の赤城神社の境内に飛んで行く。あの境内の一番奥の突き当りに長生館という下宿屋があった。たかい崖の上に、北向に、江戸川の谷を隔てて小石川の高台を望んだ静かな家だったが、片上伸先生なども一時そこに下宿していられた。