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はやみみさんじとりものききがき

早耳三次捕物聞書

林 不忘

線上閱讀林 不忘《早耳三次捕物聞書(はやみみさんじとりものききがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,050 字 · 20 頁

青空文庫

」

二人で死体を運んで、三次と伊助、材木町通りのなかほどにある伊助の店江戸あられ瓦屋という煎餅屋へ帰って行った時は、冬の夜の丑満、大川端の闇黒に、木枯が吹き荒れていた。

二

蔵前旅籠町を西福寺門前へ抜けようとする角に、万髪飾り商売で亀安という老舗があった。

十八日の四谷の祭りには、女房お藤が親類に招かれて遊びに行くことになっていたので、以前まえからの約束もあり、今朝伊助は、貧しい中からいくらかの鳥目をお藤に持たせて、根掛けの板子縮緬を買いに亀安へ遣ったのだった。

女房とはいえまだ子供子供したお藤。かねて欲しがっていた物が買って貰えることになったので、朝早くからひとりで噪気いで、煎餅の仕上げが済むと同時に、夕暮れ近くいそいそとして自宅を出て行ったが、それが小半時も経ったかと思うころ、蒼白な顔に歯を喰い縛って裏口から帰って来て、わっとばかりに声を揚げて台所の板の間に泣き伏してしまった。

吃驚した伊助、飛んで行ってお藤を抱き起し、いろいろと問い糺してみたものの、ただ、

「口惜しい、くやしいッ!」

と泣くだけで、お藤は何とも答えなかった。

女房思いで気の弱い伊助が、途方に暮れておろおろしているところへ、間もなく、小間物屋亀安の番頭が、頭から湯気を立てて、豪い権幕で乗り込んで来た。