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めいじさんじゅうにねんごろ
明治三十二年頃
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《明治三十二年頃(めいじさんじゅうにねんごろ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,373 字 · 5 頁
その後に冬木立の逆様に映った水面の絵を出したらそれは入選したが「あれはあまり凝り過ぎてると碧梧桐が云ったよ」という注意を受けた。
やはりその頃であったと思うが、子規が熟柿を写生した絵を虚子が見て「馬の肛門かと思った」と云った。それを子規がひどく面白がって「しかし本当にそう思ったんだから」ということを繰返し繰返し言い訳のように云うのであった。
募集した絵をゆっくり一枚一枚点検しながら、不折や虚子や碧梧桐を相手に色々批評したり、また同時に自分の描いておいた絵を見せたりして閑談に耽るのがあの頃の子規の一つの楽しみであったろうということも想像される。
ともかくもあの頃の『ホトトギス』には何となしに活々とした創成の喜びと云ったようなものが溢れこぼれていたような気がするのであるが、それは半分は読者の自分がまだ若かったためかもしれない。しかしそうばかりでもないかもしれない。食物に譬えれば栄養価は乏しくても豊富なるビタミンを含有していた。そうして他にはこれに代わるべき御馳走はほとんどなかった。それが、大正昭和と俳句隆盛時代の経過するうちに、栄養に富んだ食物も増し料理法も進歩したことはたしかであるが同時にビタミンの含有比率が減って来て、缶詰料理やいかもの喰いの趣味も発達し、その結果敗血症の流行を来したと云ったような傾向が