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やせがまんのせつ

明治十年丁丑公論・瘠我慢の説

福沢 諭吉

線上閱讀福沢 諭吉《明治十年丁丑公論・瘠我慢の説(やせがまんのせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,663 字 · 48 頁

青空文庫

復た離散すること能わず。すなわち国を立てまた政府を設る所以にして、すでに一国の名を成すときは人民はますますこれに固着して自他の分を明にし、他国他政府に対しては恰も痛痒相感ぜざるがごとくなるのみならず、陰陽表裏共に自家の利益栄誉を主張してほとんど至らざるところなく、そのこれを主張することいよいよ盛なる者に附するに忠君愛国等の名を以てして、国民最上の美徳と称するこそ不思議なれ。故に忠君愛国の文字は哲学流に解すれば純乎たる人類の私情なれども、今日までの世界の事情においてはこれを称して美徳といわざるを得ず。すなわち哲学の私情は立国の公道にして、この公道公徳の公認せらるるは啻に一国において然るのみならず、その国中に幾多の小区域あるときは、毎区必ず特色の利害に制せられ、外に対するの私を以て内のためにするの公道と認めざるはなし。たとえば西洋各国相対し、日本と支那朝鮮と相接して、互に利害を異にするは勿論、日本国中において封建の時代に幕府を中央に戴て三百藩を分つときは、各藩相互に自家の利害栄辱を重んじ一毫の微も他に譲らずして、その競争の極は他を損じても自から利せんとしたるがごとき事実を見てもこれを証すべし。