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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《明治開化 安吾捕物(めいじかいか あんごとりもの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 42,950 字 · 85 頁

青空文庫

虫は何百匹の同類も一ツのものと変りがない。さすがに人間は、何百ということはないが、一人が三人の顔と体をもっている」

「たとえば、どなたが、そうでしょうか」

「克子よ。お前の目にはまだ分るまい。たとえば、大伴晴高と須和康人と久世喜善が実は一人の人間だ。そして……」

宗久はやゝ口ごもった。そして、やゝ言いかねる様子であった。心の傷がそこにあるかも知れないと思われるような苦しさが、うかがわれた。

しかし、宗久は何事もないような顔つきにもどって、

「シノブも一人ではないのだ。ほかに二人のシノブがいる。カヨと、キミが、シノブなのだ。誰にも分るまいが、仕方のないことだ。お前には分らせたいが、まだ、分るまい。だが克子よ。お前だけはオレの言葉を信じてもらいたいものだ。ここに附き添っていてくれると、今に分る時がくるだろう。いつまでもここに居てくれ。オレが眠っている間も、ここを動いてくれるな。オレはお前だけしか信じることができないのだから……」

こう呟いているうちに、宗久はねこんでしまった。その寝額は、さっきに比べて、たしかに安らかなようだった。

三人の男が一人の男。三人の女が一人の女。