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はるのよる
春の夜
線上閱讀芥川 竜之介《春の夜(はるのよる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,514 字 · 6 頁
「お母様、少し静かにして頂戴。」
Nさんはこう云う雪さんの言葉に軽い反感――と云うよりもむしろ侮蔑を感じながら、その機会に茶の間を立って行った。が、清太郎に似た不良少年の顔は未だに目の前に残っている。いや、不良少年の顔ではない。ただどこか輪郭のぼやけた清太郎自身の顔である。
五分ばかりたった後、Nさんはまた濡れ縁をまわり、離れへ氷嚢を運んで行った。清太郎はそこにいないかも知れない、少くとも死んでいるのではないか?――そんな気もNさんにはしないではなかった。が、離れへ行って見ると、清太郎は薄暗い電燈の下に静かにひとり眠っている。顔もまた不相変透きとおるように白い。ちょうど庭に一ぱいに伸びた木賊の影の映っているように。
「氷嚢をお取り換え致しましょう。」
Nさんはこう言いかけながら、後ろが気になってならなかった。
× × ×
僕はこの話の終った時、Nさんの顔を眺めたまま多少悪意のある言葉を出した。
「清太郎?――ですね。あなたはその人が好きだったんでしょう?」
「ええ、好きでございました。」
Nさんは僕の予想したよりも遥かにさっぱりと返事をした。