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しょうわじゅうごねんどのぶんがくようそう

昭和十五年度の文学様相

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《昭和十五年度の文学様相(しょうわじゅうごねんどのぶんがくようそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,846 字 · 6 頁

青空文庫

そして、評論の面では、誤った文学の政論化功用論への対症として、文学の本質に再び一般の理解を据え直し、云わば文学とはどういうものかということについて語り直されることが必要であるという努力の方向がみられる。

これまでとはちがう意味での文学的啓蒙が日本の文化にとってどんなに必要かということは、二年前ともかく知性の作家と称して売れた阿部知二氏の売れゆきは去年でぐっと減って、島木健作氏さえ本年にかけて石川達三氏に売れゆきを隔絶的に凌駕されているという、一応文学以外の現象からも示されている。文学常識の急激な落潮、日本文化の低下の激甚さはもっと注目されなければならなかった本年の問題である。

評論のそういう努力の方向にかかわらず、そこにも困難と混迷の時代的な色がある。例えば作家研究を飽く迄文学の中で行おうとする正常な意企をもつ評論家が作家のタイプに関心をひかれて、タイプの共通にかかわらずそこに模する本質的なものについて余り注目を深めなかったり、歪曲された功用論への是正としての芸術本質論の方法において、文学の経た歴史の刻みを逆に辿る形をより強く示めさざるを得なかったような現象は、今日の紛糾を明日へ向って勁く掴む歴史的な感覚の弱さでは小説の弱さに通ずるものとして、私たちを深く省みさせる点だろうと思う。