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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,663 字 · 97 頁
その妹のお道というのは、四年前に小石川西江戸川端の小幡伊織という旗本の屋敷へ縁付いて、お春という今年三つの娘までもうけた。
すると、ある日のことであった。そのお道がお春を連れて兄のところへ訪ねて来て、「もう小幡の屋敷にはいられませんから、暇を貰って頂きとうございます」と、突然に飛んだことを云い出して、兄の松村をおどろかした。兄はその仔細を聞きただしたが、お道は蒼い顔をしているばかりで何も云わなかった。
「云わないで済むわけのものでない。その仔細をはっきりと云え。女が一旦他家へ嫁入りをした以上は、むやみに離縁なぞすべきものでも無し、されるべき筈のものでもない。唯だしぬけに暇を取ってくれでは判らない。その仔細をよく聞いた上で、兄にも成程と得心がまいったら、また掛け合いのしようもあろう。仔細を云え」
この場合、松村でなくても、まずこう云うよりほかはなかったが、お道は強情に仔細を明かさなかった。もう一日もあの屋敷にはいられないから暇を貰ってくれと、ことし二十一になる武家の女房が、まるで駄々っ子のように、ただ同じことばかり繰り返しているので、堪忍強い兄もしまいには焦れ出した。