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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(一)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,663 字 · 97 頁
「番頭さん。冗談じゃない。おまえさんが連れ出して何処へか隠してあるんじゃないかえ」と、半七は相手の肩を叩いて笑った。
「いえ、飛んでもないことを……」と、清次郎は蒼い顔をすこし染めた。
娘と清次郎とがただの主従関係でないことは、半七も薄々睨んでいた。しかし正直者の清次郎が娘をそそのかして家出させる程の悪法を書こうとも思われなかった。菊村の遠縁の親類が本郷にあるので、所詮無駄とは思いながらも、一応は念晴らしにこれから其処へも聞き合わせに行くつもりだと、清次郎は頼りなげに云った。彼のそそけた鬢の毛は師走の寒い風にさびしく戦慄いていた。
「じゃあ、まあ試しに行って御覧なさい。わっしもせいぜい気をつけますから」
「なにぶん願います」
清次郎に別れて、半七はすぐに菊村の店へたずねて行った。菊村の店は四間半の間口で、一方の狭い抜け裏の左側に格子戸の出入り口があった。奥行きの深い家で、奥の八畳が主人の居間らしく、その前の十坪ばかりの北向きの小庭があることを、半七はかねて知っていた。
菊村の主人は五年ほど前に死んで、今は女あるじのお寅が一家の締めくくりをしていた。お菊は夫が形見の一粒種で今年十八の美しい娘であった。