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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

思えば奥さまは気の毒である。せめてはその望み通りに、この事件の顛末を明らかにして、奥さまに一種の満足をあたえるのが自分の役目であると、半七は思った。

そのうちに、彼は何事かを思いついて、ふらりと神田の家を出た。二十八日の宵である。きょうの春雨も其の頃には晴れたが、紗のような薄い靄が朦朧と立ち籠めて、行く先は暗かった。大通りの店の灯も水のなかに沈んでいるように見えた。半七はその靄に包まれながら、築地の方角にむかった。

南小田原町へ辿り着いて、船宿の三河屋を表から覗くと、今夜は軒の行燈をおろして、商売を休んでいるらしかった。隣りの竹倉という船宿で訊くと、お信の死骸は検視が済むや否や、すぐに下谷稲荷町の女房の里方へ運んで、今夜はそこで内々の通夜をするらしく、三河屋の家内はみな下谷へ出て行って、亭主の清吉ひとりが留守番をしているとの事であった。

半七は再び三河屋の店さきに立って声をかけると、奥から亭主が出て来た。清吉はもう四十以上の頑丈そうな男で、半七を見て、仔細らしく顔をしかめたが、又すぐに打ち解けて挨拶した。

「親分でございましたか。まあ、どうぞこちらへ……」