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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁
「なんだかお天気が可怪しくなって来ましたね」と、お琴は参詣を終って空をみあげた。
「降らないうちに早く帰りましょう」と、お由も急き立てるように云った。
蝉の声もいつか止んで、あたりは気味の悪いようにひっそりと鎮まった。冷たいような重い空気が三人の肌に迫って来た。ここで降り出されては困ると思って、三人はすこし足を早めて下山の路にさしかかると、何を見たかお袖は俄かに立ちどまった。彼女は無言で母の袖をひくと、お琴も立ちどまった。お由もつづいて足をとめた。かれらは路ばたの杉の大樹のあいだに、ひとりの少女の立ち姿を見いだしたのである。
少女は十二三歳ぐらいで、色の蒼白い清らかな顔容であった。白地に鱗を染め出した新らしい単衣を着て、水色のような帯を結んでいた。それらの事はともかくも、今この三人の注意をひいたのは、少女の黒髪である。彼女の髪は切禿であった。
前にも云う通り、この頃のコロリ騒ぎのために、明神参詣の人々も俄かに増して、かむろ蛇のおそろしい伝説も暫く忘れられたような姿であったが、その伝説がまったく掻き消されたのではない。きょうの曇った暗い日に、ここで切禿の少女のすがたを目前に見いだした三人が、異常の恐怖に襲われたのも無理はなかった。