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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

それが自分たちのあとを尾けて来るようにも思われるので、幸次郎は振り返って訊いた。

「おめえはあすこに何をしていたのだ。あの祠を拝んでいたのかえ」

老女は黙っていた。

「あの祠には何が祭ってあるのだ」

「神様です」と、老女は答えた。

「神さまは判っているが、なんの神様だ」

「知りません」

「毎日拝みに来るのかえ」

「あの祠を拝みに行けというお告げがあったので、毎日拝みに来ます」

「おめえの家はどこだ」

「谷中です」

「谷中はどの辺だ」

「三崎です」

「おめえは市子さんかえ」

「そうです」

「商売は繁昌するかえ」と、幸次郎は冗談のように訊いた。

「繁昌します」と、彼女はまじめに答えた。

そんなことを云っているうちに、半七らは百姓家の前に出た。それは片商売に荒物を売っている店で、十歳ばかりの男の児が店の前に立っていたが、半七らを見ると慌てて内へ逃げ込んだ。それに構わずに、二人は店へずっとはいると、三十二三の女房が奥の障子をあけて出た。彼女は先ず子供を叱った。

「なんだねえ、お前は……。お客さまが来たのに、逃げることがあるものか」

「狐使いだよ」と、男の児は表を指さすと、女房も表をちょっと覗いて、ふたたび小声で子供をたしなめるように叱った。