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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

「つかめえましたか」と、松吉は声をかけた。

「仕様がねえ。石橋山の組討ちだ」と、半七は笑った。「だが、もう大丈夫。女だ、女だ」

半七と松吉に引き摺られて、荒物屋の店の灯の前に照らし出された曲者は、六十前後の老女であった。その人柄や身装によって察すれば、彼女もおころと同様に市子か巫子のたぐいであるらしかった。

店の框に腰をかけながら、半七は訊いた。

「おめえは何処の者だ」

「信州から来ました」と、老女は案外におとなしく答えた。

信州といえば、戸隠山の鬼女を想像させるが、彼女はそのやつれた顔に一種の気品を具えていた。その物云いや行儀も正しかった。

「名は何といって、いつから江戸へ来ているのだ」

「お千といいます。江戸へはこの六月に出て来ました」

「それまで国にいたのか」

「いいえ。江戸へ一度出て来まして、それから出羽奥州、東海道、中仙道、京、大坂、伊勢路から北国筋をまわって、十一年目に江戸へ来ました」

「なんでそんなに諸国を廻っていたのだ」

「尋ねる人がありまして……」

「たずねる人というのは……。市子のおころか」

「はい」

老女の眼は怪しく輝いた。

「ゆうべおころを殺したのはお前だな」