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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

彼は半七老人で、あさ湯帰りらしい濡れ手拭をぶら下げながら、暖い朝日のひかりに半面を照らさせていた。

半七老人と飴細工、それが不調和の対照とも見えなかったが、平生から相当に他人のアラを云うこの老人としては、朝っぱらから飴屋の店を覗いているなどは、いささか年甲斐のないようにも思われた。この老人を嚇すというほどの悪意でもなかったが、わたしは幾らか足音を忍ばせるように近寄って、老人のうしろから不意に声をかけた。

「お早うございます」

「やあ、これは……」と、老人は急に振り返って笑った。

「又お邪魔に出ようと思いまして……」

「さあ、いらっしゃい」

老人は飴売りに別れて、わたしと一緒にあるき出した。

「あの飴屋は芝居茶屋の若い衆でね」と、老人は話した。「飴細工が器用に出来るので、芝居の休みのあいだは飴屋になって稼いでいるんです」

成程その飴売りは三十前後の小粋な男で、役者の紋を染めた手拭を肩にかけていた。その頃の各劇場は毎月開場すること無く、一年に五、六回か四、五回の開場であるから、劇場の出方や茶屋の若い者などは、休場中に思い思いの内職を稼ぐのが習いで、焼鳥屋、おでん屋、飴屋、粉屋のたぐいに化けるのもあった。