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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(五)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(五)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 215,744 字 · 434 頁

青空文庫

はここに住んでいたらしい。

その寂しい場末の屋敷町にさしかかって、半七は思わず足を停めた。芝居の鳴り物が耳に入ったからである。江戸辺から行けば、右側が久保町で、その筋むかいの左側に梅窓院の観音がある。観音のとなりにも鳳閣寺という真言宗の寺があって、芝居の鳴り物はその寺の境内からきこえて来るのであった。

「むむ、小三の芝居か」

江戸の劇場は由緒ある三座に限られていたが、神社仏閣の境内には宮芝居または宮地芝居と称して、小屋掛けの芝居興行を許されていた。勿論、丸太に筵張りの観世物小屋同様のものであるが、その土地相応に繁昌していたのである。鳳閣寺の宮芝居は坂東小三という女役者の一座で、ここらではなかなかの人気者であることを半七は知っていた。

小三の名は知っていたが、半七は曾てその芝居を覗いたことはないので、一体どんな様子かと、鳴り物に誘われて境内へはいると、型ばかりの小屋の前には、古い幟や新しい幟が七、八本も立ちならんで、女や子供が表看板をながめているのが、葉桜のあいだに見いだされた。小屋のなかでは鉦や太鼓をさわがしく叩き立てていた。和藤内の虎狩が今や始まっているのである。