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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

昨晩も風の音が耳につきましておちおちと眠られずに居りますと、なんでも夜なかの事でございました。表で頻りに犬の吠える声がきこえるのでございます」

「むむ」と、吉五郎もそのあとを催促するように相手の顔をみつめた。

「夜なかに犬の吠えるのは珍らしくもございませんが、あんまり烈しく啼きますので、わたくしも何だか気味が悪くなりまして、そっと起きて店へ出まして、雨戸の節穴から覗いてみますと、表は真っ暗でなんにも見えませんでしたが、犬の吠えているのは隣りの店のまえで、その犬の声にまじって人の声が聞こえるのでございます。低い声ですからよく判りませんが、ふたりで話しているらしいので……」

「男の声かえ、女の声かえ」

「どっちも男の声のようで……」

「その男が何を話していたえ」

「それがはっきりと判りませんでしたが……。ひとりがなぜ寺へ埋めないのだと云っていたようでございました」

「その声に聞き覚えはなかったかね」

「何分はっきりとは聞き取れませんので……」

「それから其の二人はどうしたね」

「やがて何処へか行ってしまったようで、犬の声もだんだんに遠くなりました」

「どっちの方へ遠くなったえ」