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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
五月はじめの朝である。半七は町内の湯屋へ行って、暁け方からの小雨のなかを帰って来ると、格子の内に女の傘と足駄が見いだされた。人出入りの多い家であるから、別に気にも留めずはいって見ると、四十前後の見識らない女が女房のお仙を相手に話していた。
「おまえさん。この方がさっきから待っておいでなすったんですよ」と、お仙は彼女を半七に紹介した。そうして、その土産だという交肴の籠を見せた。
「初めましてお目にかかります」と、女は丁寧に挨拶した。「わたくしは神明前のさつきでございます」
その名を聞いて、半七はすぐに思い当たった。彼女はさつきのお力で、なにか三甚に係り合いのことで尋ねて来たのであろうと察したので、ひと通りの挨拶を済ませた後に、半七は訊いた。
「おかみさんも忙がしいだろうに、朝から何か急用でも出来しましたかえ」
「早朝からお邪魔に出ましたのは、ほかでもございません。親分も定めて御承知でございましょうが、先月の二十三日に伝馬町の牢抜けがございましたそうで……。それに付きまして、少々お知恵を拝借に出ましたのでございますが……」
「牢抜けは知っていますが、それがどうかしましたかえ」