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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
「ごめんなさい」
「はい、はい」
内からは女房らしい女が出て来た。
「こっちに芝口の三甚が来ているね」と、男は馴れなれしく云った。
「いいえ」
「隠しちゃあいけねえ」と、男は笑った。「ちょいと三甚に逢わせてくれ。おれは三河町の半七だ」
半七はおどろいた。それと同時に、この偽者の正体も大かたは判った。半七は息を殺して窺っていると、偽の半七は又云った。
「三甚は神明前のさつきの娘と一緒にここに来ているだろう。それまで知っているのだから、胡乱の者じゃあねえ。三河町の半七といえば、三甚もよく知っている筈だ、ちょいと呼んでくれ」
女房がまだ躊躇しているので、男は焦れ出した。
「まだ判らねえのか。おれは半七だよ。三河町の半七だよ」
「うるせえな。半七はここにいるよ」と、半七は男の前にずっと出た。
男はぎょっとして半七を見かえったが、彼もさすがに眼がはやい。たちまちに身をひるがえして、そこらの植木溜めの中へ飛び込んだかと思うと、枝をくぐり、葉をかき分けて、飛鳥のごとく表へ逃げ出した。半七もつづいて追って出たが、もう其の頃は往来もだんだんに薄暗くなっていた。
こういう場合、ただ黙って追うよりも、声をかける方が相手の胆をひしぐことになる。