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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

「今も云う通り、寺社方からのお指図が出て、三日の猶予で落着したのはきのうの夕方だと云うじゃあねえか。世間ではまだ知る筈がねえ。それをすぐに覚って仕事に来た以上、なにか内輪に係り合いのある奴に相違ねえ。そのつもりで探りを入れたら、手がかりが付きそうなものだと思うが……」

「そうですね」と、勘太はうなずいた。「成程こりゃあ内輪の機密を知っている奴らに相違ありません。好うござんす。そのつもりで探ってみましょう」

「まあ、おれも一緒に行ってみよう。どうでもう開帳は仕舞った時刻だ。ゆう飯でも食って、それから出かけよう」

二人は夕飯を食って、暮れ六ツを過ぎた頃から竜土の家を出た。その頃の麻布は大かた武家屋敷で、場末には百姓地もまじっていた。笄橋を渡って、いわゆる渋谷へ踏み込むと、普陀山長谷寺の表門が眼の前にそびえていた。寺は曹洞派の名刹で、明治以後は大いに寺域を縮少されたが、江戸時代には境内二万坪にも近く、松、杉、桜の大樹が枝をかわして、見るから宏壮な古寺であった。

大きい寺には門前町があるが、ここにも門前の町屋が店をならべて、ふだんも相当に賑わっているところへ、今度の開帳を当て込んで急拵えの休み茶屋や、何かの土産物を売る店なども出来たので、ここらは場末と思われない程に繁昌していた。