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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

藤助は無言で寺の門内にはいった。提灯は彼と共に去ってしまったので、門前はもとの闇にかえった。その暗いなかで、長三郎は黒沼の小父さんの死骸をかかえながら、半分は夢のような心持で、氷った土の上に小膝をついていた。

その夢のような心持のなかでも、彼はかんがえた。小父さんが急病で仆れたので無いことは、刀の柄に手をかけているのを見ても判っている。小父さんは何物にか出会って、刀をぬく間もなしに仆れたのであろう。長三郎はかの白い蝶を思い出した。自分はたった今、こちらで怪しい蝶の影をみたのである。小父さんはかの蝶のために仆されたのではあるまいか。長三郎は一種の恐怖を感ずると共に、又一方にはおさえがたい憤怒が胸をついた。

「畜生、おぼえていろ」

彼は肚のなかで叫びながらあたりの闇を睨んでいるとき、藤助の提灯の火が鬼火のように又あらわれた。彼は片手に小さい手桶をさげている。

血のめぐりが悪いのか、あるいは意地が悪いのか、こういう場合にも彼はさのみに慌てている様子もみせず、いつもの足取りで徐かに歩いて来るらしいのが、又もや長三郎を焦燥たせた。

「おい。早く……早く……」