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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
いくら暗闇だって、まわりに大勢の人がいるのだから、きゃあとか何とか声を立てるぐらいのことは出来そうなものだ。まさかに友蔵に引っ担いで行かれたのでもあるめえ。おれももう少し考えるから、おめえは善ぱと手分けをして、伊豆屋と和泉屋の内幕を探ってくれ」
「こうなると此の春、府中へ行って来て好うござんしたね」
「むむ。なにが仕合わせになるか判らねえ。だしぬけにこんな事を持ち込まれたのじゃあ見当が付かねえ」
幸次郎を出してやって、半七は又しばらく考えた。伊豆屋の番頭の話だけでは詳しいことは判らない。番頭もまた一家の秘密を洩らすまい。したがって、その話のほかに、伊豆屋と和泉屋にからんで如何なる秘密がひそんでいないとも限らない。所詮は幸次郎と善八の報告を待って、それから正確の判断をくだすのほかはなかったが、半七は平生の癖として、ともかくも今までに与えられた材料によって一応の推測を試みようとした。中っても外れても、考えるだけは考えなければ気が済まないのであった。
表には苗売りの声がきこえた。けさから催していた雨がしずかに降って来た。その雨の音を聞きながら、半七は居眠りでもしたように目を瞑じていたが、やがて手拭いと傘を持って町内の銭湯へ出て行った。