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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
女は破れ畳に白い顔を摺りつけて泣いているのを、友蔵はおもしろそうに眺めながら茶碗酒を呷っていた。
「あの女ですよ。さっき酌をしていたのは……。よもや幽霊じゃあありますめえ」と、善八は小声で云った。
「むむ。戸を叩け」と、半七は指図した。
「ごめんなさい。今晩は……」
善八が戸をたたくと、友蔵は茶碗を下に置いて、表を睨みながら答えた。
「だれだ。今ごろ来たのは……」
「おれだよ。このあいだの鵜を買いに来たのだ」と、半七は云った。
「なに、鵜を買いに来た……」
「あの鵜を百両に買いに来たのだ」
「冗談云うな」
とは云いながら、幾分の不安を感じたらしく、友蔵は身がまえしながら雨戸をあけに出た。その雨戸は内そとから同時にがらりと明けられて、善八はすぐに飛び込んだが、相手も用心していたので、もろくは押さえられなかった。殊にしん吉とは違って、頑丈の大男である。二人は入口の土間を転げまわって揉み合ううちに、友蔵は善八を突きのけて表へ跳り出ようとする、その横っ面に半七の強い張り手を喰らわされて、思わずあっと立ちすくむところを、再び胸を強く突かれて、彼はあと戻りして土間に倒れた。