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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

月に一度でも親や妹の顔が見られれば結構でござりますと、お歌は殊勝らしく答えた。

「それがやはり思惑のあることで……」と、祥慶は溜め息まじりに語りつづけた。「金は一文も要らない、決して無心がましいことは云わないと申して居りましたが、お歌は慾心でなく、色情で……。お歌はどうしてか俊乗に恋慕して居ったのでござります」

「お歌は松蔵とも係り合いがあったのでしょうね」

「さあ、本人は唯の知り合いだと申して居りましたが、あんな人間同士のことですから、どういう因縁になっているか判りません」

「松蔵は相変らず出入りをしているのですか」

「はい、時々に参ります」

お歌は色、松蔵は慾、双方から責め立てられる俊乗の難儀は思いやられた。

五

「月に一度という約束でありながら、お歌は二度も三度もまいりました」と、祥慶は又云った。「俊乗がやがて堕落することは眼にみえて居りましたが、わたくしにはそれを遮ぎる力がありません。お歌もさすがに昼間はまいりませんので、幸いに近所の眼には立ちませんでしたが、仕舞いには俊乗をどこへか連れ出すようになりました。可哀そうなのは俊乗で、縛られ地蔵のことも本人の発意では無し、いわば師匠のわたくしを救うが為に、こんな難儀をして居るのでござります。