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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

「まだ臥せって居ります」

お勝は病中であるにも拘らず、父の急変におどろかされて、母と共に現場へ駈け着けたばかりか、その翌日も無理に起きていたので、病気はいよいよ重くなった。彼女は母のお富と、新らしい婿の幸之助とに看病されて、その後も床に就いているのである。彼女は父の葬式に列なることも出来なかった。葬式やら、病人やら、黒沼家の混雑は思いやられて、長八はますます同情に堪えなかった。

「就きましては、明日は初七日の逮夜に相当いたしますので、心ばかりの仏事を営みたいと存じます。御迷惑でもございましょうが、御夫婦と御子息に御列席を願いたいのでございますが……」

「いや、それは御丁寧に恐れ入ります。一同かならず御焼香に罷り出でます」と、長八は答えた。

これで正式の挨拶も終ったところへ、娘のお北が茶を運んで来た。まだ馴染の浅い仲とはいいながら、客と主人はやや打ち解けて話し出した。

「御承知でございますか。護国寺前の一件を……」と、幸之助はお北のうしろ姿を見送りながら少しく声を低めた。

「護国寺前……。何事か、一向に知りません」と、長八は茶を喫みながら云った。「白い蝶でも又出ましたか」