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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
いずれにしても更に真偽を確かめる必要があると思ったので、長三郎はきょうの発見についていっさい沈黙を守ることにした。お北もやがてあとから帰って来た。その話によると、音羽の大通りまで買物に出たのだと云うことであった。
音羽の通りへ買物に出たものが、横町の寺門前までわざわざ廻って行く筈がない。そんな嘘をつく以上は、姉の行動はいよいよ怪しいと、長三郎は思った。
それから二、三日の後である。長三郎が夕飯をすませてから、いつもの如くに夜学に出ると、四、五間さきをゆく男のうしろ姿が隣家の黒沼幸之助であることを、薄月のひかりで認めた。彼はどこへ行くのであろう。又もや姉を誘い出して、かの寺門前で密会するのではあるまいかと思うと、長三郎はそのあとを尾けてゆく気になった。彼は草履の音を忍ばせて、ひそかに幸之助の影を追ってゆくと、その影はかの横町の方角へはむかわずに、路ばたの狭い露路にはいった。
露路の奥には火の番の藤助の家がある。彼はその家をたずねるのか、それとも他の家をたずねるのか、長三郎は更に又新らしい興味に駆られて、つづいて露路のなかへ踏み込んだ。先日一度たずねた事があるので、長三郎は先ず藤助の家のまえに忍び寄って内の様子を窺うと、故意か偶然か、行燈の火は消えて一面の闇である。