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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

幸之助はそのあとを追ってゆく。町人ふうの男は又そのあとを追って行くらしい。まだ宵であるから、両側の町屋も店をあけていて人通りもまばらにある。それを憚って幸之助も直ぐに女に追いすがろうとはしない。男も相当の距離を取って尾けて行くので、長三郎もその真似をするように、おなじく相当の距離を置いて尾行することにした。

女は途中から左に切れて、灯の無い横町へはいってゆくと、左右は農家の畑地である。そこまで来ると、幸之助は俄かに足を早めて女のうしろから追い付いた。その足音をもちろん知っていたのだろうが、女は別に逃げようとする様子もなく、しずかに振り向いて相手と何か話しているらしかった。

町人はそれを見て、身をかくすように畑のなかに俯伏したので、長三郎もまた其の真似をして畑のなかに俯伏していると、やがて女は幸之助を突き放してふた足三足あるき出した。幸之助は追いかけて、女の襟に手をかけた。引き倒そうとするのか、喉でも絞めようとするのか、男と女は無言で挑み合っていた。

俯伏していた町人は畑のなかから飛び出して、飛鳥のごとくに駈け寄ると、それに驚かされて二つの影はたちまち離れた。