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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
と、吉五郎はしずかに煙草をくゆらせた。「それから火の番の藤助というのはどうした。これも帰らねえか」
「帰って来ません。こいつは確かに蝶々に係り合いがあると睨んでいるんですが……。なにしろ忌にこぐらかっているんでね」
「どうで探索物はこぐらかっているに決まっているから、まあ落ちついて考えて見なけりゃあいけねえ」
吉五郎はつづけて煙草を喫った。留吉も煙管筒を取り出した。親分と子分は暫く無言で睨み合っていると、その考えごとの邪魔をするように、町内の午祭りの太鼓の音が賑やかにきこえた。
「幸之助はその晩から自分の家へ帰らねえのか」と、吉五郎は煙管をはたきながら訊いた。
「これも帰って来ないようです」と、留吉は答えた。「わっしに捕まりそうになったので、どこへか姿を隠したと見えますよ」
「だが、幸之助はともかくも侍だ。火の番の親爺とは身分が違うのだから、姿を隠したままで済む訳のものじゃあねえ。そんな事をすれば家断絶だ。黒沼という家でも飛んだ婿を貰ったものだな。ひょっとすると、白魚河岸の実家に忍んでいるんじゃあねえか」
「わっしもそう思ったので、けさも出がけにそっと覗いて来たんですが、どうもそんな様子も見えないようでしたが……。