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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁
彼は人ごみの間をくぐり抜けて、日本橋を南へむかって急いで来たが、長い橋のまん中ごろまで渡ったかと思うときに、彼はどうしたのか俄かに足を停めた。と見る間もなく、彼は頭の魚籠を小脇に引っかかえて、欄干から川のなかへざんぶと飛び込んだので、往来の人々はおどろいた。
威勢のいい魚河岸の若い衆が、なんで突然日本橋から身を投げたのか。仔細を知らない人々は唯あれあれと騒いでいたが、そのなかで唯ひとり、その仔細を大抵推量したのは神田三河町の吉五郎であった。彼は何処をどう歩いていたのか知らないが、あたかもここへ来かかって此の椿事を目撃したのである。
若い衆が川へ飛び込んだのは、鯛を持っていたが為であろうと、吉五郎は思った。徳川家には御納屋という役人がある。それは将軍の食膳に上せるべき魚類、野菜類を取り扱う役で、魚類だけでも鯛の御納屋、白魚の御納屋、鮎の御納屋などと、皆それぞれの専門がある。この御納屋の特権は、良い魚類とみれば勝手に徴発を許されていることである。御納屋の役人が或る魚を指さして、「これは御用だぞ」と云ったが最後、忌でも応でもその魚を納めなければならない。