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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(六)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(六)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 196,831 字 · 396 頁

青空文庫

彼は謎のような女に手を握られたままで、やはり暫くは黙っていた。

一〇

お冬は長三郎の手を固く握ったままで、更にささやいた。

「あなたの探している人は見付かりましたか」

なんと答えようかと長三郎はまた躊躇したが、結局思い切って正直に云った。

「見付からない」

「教えてあげましょうか」

「おまえは知っているのか」

「知っています」

「ほんとうに知っているのか……。教えてくれ」と、長三郎は疑うように訊いた。

「あなたの探している人は……。御近所にかくれています」

「近所とは……。どこだ」

「佐藤さまのお屋敷に……」と、お冬は左右を見かえりながら声を低めた。

「佐藤……孫四郎殿か」と、長三郎は意外らしく訊き返した。「どうして知っている」

それにはお冬も答えないので、長三郎は摺り寄って又訊いた。

「そこには幸之助と……。まだほかにも隠れているのか」

自分の姉の名をあらわに云い出し兼ねて、長三郎は探るようにこう訊くと、お冬は頭をふった。

「いいえ、黒沼のお婿さんだけです」

長三郎は失望した。勿論、幸之助の詮議も必要であるが、さしあたりは姉のゆくえを探しあてるのが自分の役目である。