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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁
一太郎君はちょっと考えてみましたが、やっぱりほかに答え方はありません。
「下るんでしょう」
「どうして」
「だって、息をふきつければ寒いんでしょう。だから、寒ければ寒暖計は下るにきまっているもの」
「よし。それじゃ、やってみるよ」
高橋さんは、また紙のくだを口にくわえ、水銀玉をめがけて、ふーっ、ふーっと息を強くふきつけました。
すると、これはどうしたことでしょう。寒暖計の水銀は、下るどころか、みるみるうちに、十六度、十七度と、ぐんぐんのぼって行きます。一太郎君は、ほんとうにびっくりしました。高橋さんが、何か手品でもつかっているのではないかと思ったほどです。
「君も自分でやってみるといい」
一太郎君は紙のくだを受けとって、まず自分の手をふいてみて、寒いことをたしかめてから、同じ強さで寒暖計の水銀玉にふきつけましたが、やっぱり水銀は、のぼって行くのです。水銀が十五度に下るのを待って、くりかえしてやってみましたが、何度やっても同じことです。
一太郎君はどう考えても、わけがわかりません。
「へんだなあ。この部屋の空気より暖い息がかかれば、そこだけ暖く感じそうなものなのに、どうして寒く感じられるのだろう。