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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

これも知っているだろう。ぬれ布にアイロンをあてると、ジュンといって水分が蒸発してしまうね、つまり、かわいてしまうね。だから水が蒸発するためには熱がいるということがわかるだろう」

「うん」

一太郎君は高橋さんの顔を見つめて、強くうなずきました。

何だか少しずつ、わけがわかって来るような気がしたからです。

「すると、どういうことになるね。手に息をふきつけると、そこの水分が急にかわく。ところが、そのかわかすためには――つまり、水分が蒸発するためには熱がいる。その熱はどこから出ると思うね」

「あ、わかった。体からでしょう。人間の体には熱があるから」

一太郎君は風をひいて、たびたび体温計で熱をはかっていたので、すぐそこへ気がつきました。人間の体には三十六度何分の熱が、いつでもあるということを、よく知っていたのです。

「そうだ。そうなんだよ。僕らの皮膚の水分は、体の熱で、いつでも少しずつ蒸発しているんだが、息をふきつけると、そこだけ一ぺんにたくさんの水分が蒸発する。そのためには、熱もたくさんいるので、息をふきつけられたあたりの皮膚の熱が、急に少くなる。熱が急に少くなるので、部屋の空気より暖い息がかかっても寒く感じるのだよ。