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ちえのいちたろう

智恵の一太郎

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁

青空文庫

いくら身がかるいといっても、そんなに大きくぶらんこをゆするのは、むずかしいことだよ。

もっとうまいやり方があるんだ。なんでもないことなんだよ。口でいうよりも、実物を見た方がいい、きっと、どこかにいま橋をかけようとしている蜘蛛がいるにちがいないよ。一つそいつをさがしてみようじゃないか」

伯父さんはそういって、小川のふちを、立木のあるところでは立ちどまって、念入りに木の枝をしらべながら、前へ前へと歩いて行きましたが、およそ百メートルも歩いたころ、やっとそれが見つかったらしく、小川のむこう側の猫柳の木を指さして、

「ほら、ここにいた。ごらん、ちょうどいま、橋をかけようとしているところだよ」

よく見ますと、その猫柳のなかほどの枝から、一本の目にもとまらないような、細い細い蜘蛛の糸が、一メートルぐらいの長さにのびて、それがそよ風にふかれて、フワフワと小川の上を越し、今にもこちらの側の木の枝にとどきそうになっているのです。

「わけはないだろう。糸だけをグングン出して、こうして風にふかせておけば、自分がぶらんこなんかするよりも、ずっとらくにこちらの岸にとどくわけだからね。