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ちえのいちたろう
智恵の一太郎
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《智恵の一太郎(ちえのいちたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 67,333 字 · 134 頁
あれを取ってみるからね」
一太郎君はそういいながら、しゃがんで、そのへんにころがっていた、にぎりこぶしほどもある石をひろって、いきなり、それを池の中へ投げこみました。
すると、石は木ぎれの五六センチ向こうに落ちて、ドブンと大きな水しぶきをあげ、その水の動くいきおいにつれて、木ぎれは三十センチほども、岸の方へ、ただよいよりました。
波がしずまるのをまって、一太郎君は、又べつの石をひろい、前のように投げました。そして、次々と、五つの石を投げたのですが、一つ投げこむたびに、木ぎれは少しずつ岸の方へ近づいて、五つ目の石を投げた時には、木ぎれはもう、岸から手のとどくところに来ていました。一太郎君はしゃがんで、手をのばし、それをひろい上げました。
「ね、わかったかい。この石のたてる水しぶきが、象の鼻息のかわりなのさ」
「なーんだ。そんなことか」
良雄君は、さっきおどろいたのが、はずかしいというような顔つきです。
「ほらね、きっとそういうだろうと思った」
一太郎君は、そういって、丸い目をクリクリさせながら、やはりにこにこと笑っていました。
みなさん、一太郎君の考えはほんとうに、なんでもないことでした。